音楽家たちの優れた力、音楽の素晴らしさを
もっと世の中に引きだす指揮者であり、
イノベーターでありたい。
岸本祐有乃さん
Yurino Kishimoto
44期生(2015年9月入学〜2017年8月修了)
指揮者
組織のパフォーマンスを最大に引き出す
経営の力を学びたかった。
指揮者という仕事は、多いときは100人にもなるオーケストラの団員とコミュニケーションを重ねながら、今回はこういう方向へ行こうと旗を振る役。オペラをやるときはさらに合唱団が100人、10人弱のソリスト、演出家、振付師、ダンサー、さらに大道具さん、小道具さん、照明さん、音響さんと、立場や専門性、国籍も違う300人以上が関わるわけで、スムーズに進むわけがありません。日程を調整して細かい打ち合わせを重ね、リハーサルの準備をし、リハーサルをして、コンサートの本番を迎えます。過去のカリスマ的な指揮者のような絶対君主的なやり方ではなく、手綱は握りながらも、相談を重ね、じゃあこう行きましょうと方向を一緒に見定めていくことが必要になります。そんな難しいマネジメントの仕事であるにも関わらず、私自身にその能力が不足していると感じたことが、MBAを学ぼうと思った一つのきっかけです。指揮の仕事と、音楽大学での講師の仕事をしながら、2年間、BOND-BBT MBAで学びました。人や組織の動かし方については、「人材戦略論」「組織論」で、自分が現場で模索してきたことを改めて整理できました。組織を動かすにも一人ひとりと向き合って関係を構築することが重要であるなど、経営者に大切なことはそのまま指揮に活かせるものでした。できることをやり尽くし、一人ひとりの自発的なものを大切にしてパフォーマンスを引き出せたときは、エネルギーは数倍にもなり、音楽も素晴らしいものが出てきます。
優れた音楽家たちの力を、
世の中のニーズとつないでいきたい。
MBAを学ぼうと決めたもう一つの理由は、音楽家の世界と社会との間にギャップがあると感じたことです。音楽家はもっと世の中のニーズを受け止めて、新しい音楽会のあり方を企画したり、クラシック音楽を愉しむ人たちの裾野をもっと広げていけないか、産業界やビジネスパーソンにはもっと音楽の良さを知ってもらい、ビジネスイベントなどに音楽を活用してもらえないかと考えるようになったことでした。これにもBOND-BBT MBAは有効でした。他業種の事例から、音楽界にもどういうビジネスチャンスがありうるかを考えるようになったり、マーケティングの共通言語が身についた感覚があります。また、世界各地で仕事をしているクラスメートとAirCampus®やSkypeでディスカッションしながらビジネスプランをまとめていくグループワークは、私にとって相当な試練でしたが、本当に鍛えられました。もともと指揮者になる前は、理系の研究職だったので対人にも全く強くない自分が、あるときはグループの舵をとったり、頼りになる人がいるときは助けてもらったり。お互いを短時間で理解して、協力して物事を進めるプロジェクトマネジメントの力も高められたと思います。いちばん最後に組んだメンバーとは、お互いの個性を全部アウトプットしながらうまくコラボレーションでき、発表したビジネスプランはクラスで賞をいただきました。身につけたビジネス構想力を活かして、新しいクラシックの楽しみ方を企画し、実現していきたいと思います。音楽家にも世の中のニーズを伝えたい。指揮者という立場から見えるものは多く、音楽界のイノベーションに貢献できることがあると思っています。
- —勉強のスケジュールは?
- 特にコンサートがあった日などは夜はへとへとなので、朝4時に起きて取り組む朝型のスケジュールでした。平日は毎日2時間、土日のどちらかは一日中勉強するようにしました。ただコンサートは土日に多いので、年間に20〜30くらい行うコンサートと、MBAの勉強の山が重なるときは隙間時間をうまく使うように努めました。
- —モチベーションの保ち方は?
- ああ、こういうことを知りたかったんだという科目が満載で、その楽しさがあるから、大変さも乗り越えて続けられたのだと思います。また、私が勉強の時間を取ることに夫と娘が協力してくれたことも大きかったと思います。