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女性活躍新法がもたらしたもの~広がるキャリアの選択肢【女性のキャリアを考える。第9回】

Bond-BBT MBA2期生で、キャリアカウンセラーもされている藤野祐美さんの記事。
第9回目は、法整備によってもたらされた変化をどう受け止めるか、そのような視点でお送りします。

2016年4月1日、女性にとっては、キャリアの選択肢が広がる大きな一歩となった日です。女性活躍推進法が施行されたのです。

ご存知のとおり、女性活躍推進法とは従業員が301人以上の企業に対し、女性活躍に関する状況把握・課題分析をし、その解決のための数値目標と行動計画を作成。これを周知、公表すると共に、自社の女性活躍に関する情報も公表しなさいというものです。

これを受けて各企業では、一気に女性活躍推進に向けての動きが始まりました。女性管理職比率の引き上げ、女性の採用比率の増大、女性役員の育成等の目標数値や行動計画が、各企業のホームページ等にも公表されています。

この変化は、好むと好まざるに関わらず、大なり小なりの影響を我々女性にもたらしました。これまで自分のキャリアの中では、管理職になることなど一切イメージしていなかったというのに、有無を言わせずいきなり、管理職に抜擢された方もあれば、一般職で仕事をしながら、ずっとこのままでいいと思っていたのに、職群転換で総合職になることを求められた方。企業によっては、あるキャリア以上の女性をすべて管理職にするといった、大胆な策をとられたところもあったくらいです。女性がキャリアを考える際には、その影響を無視できない法律と言えましょう。

枠組みを取り払うチャンス

キャリア開発に限ったことではありませんが、我々が最初の一歩踏み出せないとき、そこには、どんな原因があるのでしょうか。自分の第一歩を邪魔しているもの、その一つが、誰もが持つ“思い込み”、いわゆる“思考の枠組み”といわれるものです。

“失敗したら、みっともないから辞めておこう。”
“経験が無いから、やり方がわからない。上手くいかないと恥ずかしいから、挑戦するのは見送ろう。”
果たして、本当にそうなのでしょうか?“失敗することは、みっともないことである。”

こんな思い込みに縛られていれば、確かに新たにチャレンジすることはできません。しかしながら、失敗は本当にみっともないのでしょうか。これこそが、自分を縛っている枠組み=自分だけの“べき論”です。
失敗するから、そこから学ぶ。そこで止めずに成功するまで続ければ、それは成功でしかありません。わずか1回の失敗で止めてしまうから、終わるのです。

誰かが背中を押してくれることで、気乗りはしないものの、やらざるを得なくなり、挑戦してみる。もがきながらも、結局やり遂げる自分を発見する。以前とは違うステージに立っている自分。こんな経験は誰にでもあることでしょう。

女性活躍推進法は、新たな可能性をもたらしています。今まで考えもしなかった管理職として働くこと。仕事を続けるために諦めようと思っていた二人目の出産。新法施行以降、職場で増え始めている“育メン=自分自身も育児を楽しみ、かつ、部下の育児に理解を示す上司“の下では、出産をあきらめるどころか、むしろ上司が応援してくれる。あきらめかけていた二人目の出産とキャリアの継続が叶うのです。これまで、知らず知らずのうちに自分でつくってしまっていた“べき論”からくる枠組みが、法律という後押しにより、取り払われようとしているのです。もう、最初の一歩に戸惑う必要はありません。

“やったことがない”と“できない”は違う

リーダー開発の現場で、衝撃が走った調査があります。世界で活躍する約7,000人のリーダーに共通してみられる16のリーダーシップ・コンピテンシー(行動特性)のうち、12項目において女性の方が男性よりも優れているというのです。(「A Study in Leadership: Women do it Better than Men」Jack Zenger and Joseph Folkman)

指導力を発揮する、周囲の人を鼓舞し動機付ける、変革を支援する・・・・といったリーダーシップ・コンピテンシーですが、女性の中で、いったいどれくらいの方が、それが自分の優れた点であると自覚されておられるでしょうか。

そもそも実際に体験が無ければ、まず自分がそんな力を発揮できると考えることはないでしょう。変革を支援するという機会をもってはじめて、実際にそれがどんなものかを理解し、それをやることによって学び、腕を磨き、自信を深め、自らの強みとしていくことでしょう。

歴史的・社会文化的背景により、ビジネス社会において男性に比して、女性の機会が少なかったことは否定できません。機会がなければ、己を知るチャンスも無ければ、そこに道を拓くこともありませんでした。

目の前の新しい道

女性活躍推進法により、新たな扉が開かれました。待ち望んでいた機会から、想像もしなかった機会までが、今、訪れようとしているのです。自分だけの“べき論”を解き放ち、この機会に一歩踏み出してみる。新法の施行は、あらたなキャリアの可能性をもたらすプランドハプンスタンなのかもしれないのです。

今回の女性活躍推進法は10年間の時限立法です。すなわち時間が来たら消えてしまう法律です。法律が消え去るその時、どんな自分でありたいですか。

 

講師プロフィール

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藤野 祐美 氏
株式会社Y’sオーダー 代表取締役
オーストラリア BOND大学 大学院 経営学修士課程(MBA) 修了。
ミノルタカメラ(現コニカミノルタ社)にて、産業用計測機器の販売企画、販売支援に従事の後、P&G社(米資本)での国際人事業務を経て、世界最大の水産飼料会社ニュートレコ社(オランダ資本)の日本法人立ち上げに参画。同社はじめ、関連会社2社を起ち上げ、取締役に就任。アジア太平洋地域人事統括として、組織開発、人材開発に従事。その後、2007年株式会社Y’sオーダーを設立、代表取締役就任。グローバル市場で活躍できる人材育成のための組織開発・人材開発を手掛ける。

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