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新規事業の企画を任されたのに、さらに別のプロジェクトにアサインされ大変・・・。自分はどうしたら良いのでしょうか?

働くことに、悩みは尽きない。社会への男女共同参画がうたわれ、女性活躍推進法の成立など「働く女性」にとって大きな変化を迎えている今日、「働く女性」の切迫した悩みを多く耳にします。

Bond-BBT MBAプログラムを運営するビジネス・ブレークスルー(BBT)では、「働く女性」のリアルな悩みに対して、同じような悩みを乗り越えてきた先輩や働くことに関する課題を数多く解決してきたプロフェッショナルなど、複数の回答者からアドバイスが受けられるサービスを提供していきたいと思っています。

この記事では、新卒で一部上場企業に入社し10年目となる戸田優さん(33歳)の質問に、3人の先輩方がリレー形式で回答している様子を公開します。ご自身が抱える「働く女性」ならではの悩みと照らし合わせながら、どうぞご一読ください。

Q. 戸田優さんからの質問内容

社員数500名ほどの一部上場企業で新規事業の企画をしています。今の会社に勤めて現在10年目です。

仕事にも大分慣れ、プロジェクトの責任者をサポートする役割につくことが多くなりました。また最近、新規事業の企画を任されたのですが、どうにか立ち上げることができました。今はこの事業を成長させるための企画をチームメンバーと共に日夜考えているところです。

その矢先、上司から突然もう一つのプロジェクトにアサインされてしまいました。正直なところ今の業務を最優先にしたいのですが、まだまだ仕事を断れる立場ではないため、結局は二足の草鞋を履くことになってしまいました。上司からは、部署のメンバーをサポートとして付けると言ってもらえていたのですが、そのメンバーはこれまで全く違うプロジェクトをしていたため、仕事をお願いしたいもののゼロから説明しなくてはいけないこともあり、その労力を考えると自分一人で仕事を進めた方が早いと思ってしまいます。また、管理職でもない自分が仕事を振ることへの躊躇もあり、遠慮してしまう側面もあります。

こんな状態で仕事をしているせいか、最近はパツパツで凡ミスも多発していまして、現状をどのようにして打破したらいいのかを悩んでいます。私にアドバイスをください。

A1. 業務改善・オフィスコミュニケーション改善士 沢渡あまねさんの回答

なかなか悩ましい悩みですね。でもそのような状況は、優さんがそれだけ上司から期待されている証拠でもあり、ここでの振舞い方を試されている可能性もあります。とはいえ、我慢と無理は禁物。次の2つの行動をしてみてはいかがでしょうか。キーワードは「そこに期待はあるのか?」

1.自分に何が期待されているのかを確認する

この背景には2つの可能性があります。これをまず判断しましょう。

(1)上司があなたの能力や成長に期待をしている
(2)上司があなたに単に都合よく何でもかんでも任せている

この見極めは大変重要です。もし(2)になっているとしたら、優さんは単なる「便利屋」としか思われていない可能性があります。その場合、自分の強み、やりたいこと、将来目指す姿などを一度上司に伝える必要があります。逆を言えば、日頃このような自分の思いを伝えていますか?振り返ってみましょう。

(1)であれば、具体的に何を期待されているのか? 自分に何を求められているのか? これを自分なりに考えてみましょう。あるいは、直接上司と会話するのも良いと思います。オフの場(休憩時間に、コーヒーを飲みながらでも良いかもしれません)でちょこっと会話してみるのもいいですね。

自分への期待を明確にすることで、「正しい頑張り方」を考えることが出来ます。しっかりした上司であれば、(2)は望まないはずです。まずは、(1)か(2)かを考えてみましょう。

2.仕事をコントロールする

パツパツの状態をそのままにしない!

これ大事です。上司が優さんの成長を期待しているのであれば、優さんがこの状況をどうコントロールするか見られている可能性もあります。言い換えれば、より一段高いレベル(リーダー、マネージャーなど)に上げられるかどうか試されています。

<悪い例>
・パツパツのまま自分で頑張ろうと突き進んで、結局なにもうまくいかなかった。あるいは倒れてしまった。
・「忙しすぎて、出来ません!」と大変さだけを訴える。

<良い例>
・「パツパツで回りそうにありません。そこで、なんとか回るよう対策案を考えました」
・「パツパツで回りそうにありませんので、仕事毎の優先度を考えました」

仕事のコントロールをするとは、<良い例>のような提案と実践ができることだと考えます。そのために、次の4つがポイントです。

①上司にアラートをあげる
②何が問題かを客観的に伝える
③何をしたいかを主観的に伝える
④「どうしたらできるか?」を主体的に伝える

中でも④が肝です。どうしたらできるか?

・他のチームメンバーを頼る
・外注する
・優先度の低い仕事は捨てる

様々な選択肢が考えられます。主体的に状況をとらえ、主体的に上司を使い、主体的に方法を考えて実践する。これは悪いことも恥ずかしいことでもありません。

組織の目標を達成するために、そしてチームメンバーの成長のためにも必要です。リソース(ここでは上司・チームメンバー・外部)を使って、成果を出す。これにチャレンジしてみましょう。そのためには、自分1人で何とかしようとしない。これが大事です。

A2. 広告代理店勤務 部門長 Y.Aさんの回答

沢渡さんは丁寧に回答されていますが、この投稿を読んだ時にパッと出てきた回答は「いや、それでも、やるしかないでしょう!」でした。

自分の経験をもとに回答をしますと、新卒で入社した一部上場企業でも、現在14年目となった今の会社でも、膨大な業務量をこなすためにはどうすればいいのかを第一に考えて動いていたので、優さんが今悩んでいるその時間が勿体ないと思ってしまいました。

また質問内容の「アサインされてしまいました」という表現からも、優さんがこの仕事に対し受け身の姿勢であるように感じましたが、意欲的に取り組めないプロジェクトであるならば、なぜ引き受けてしまったのかなと疑問に思います。どうしても前向きにやろうという気持ちが持てないのであれば、仕事として続かないと思いますので、潔く身を引くことも選択肢の一つではないでしょうか。

きっと、上司からも会社からも期待されていると思います。そして、その期待に応えようと前向きに取り組みたくて悩んでいる優さんの気持ちもよくわかります。ですが、仕事が増えることによって他の仕事がこなせない、誰かに迷惑がかかってしまう、といった周りへの影響を気にされすぎているとも思います。

私自身も20代30代の頃は、同じようによく悩んでいました。優さんはきっと、今の自分の仕事を頼める人もいないのだろうと思いますが、私も「人のために何かをしたい」という気持ちが強いため誰かに仕事を任せるのが苦手で、仕事を抱え込みすぎてパツパツになってしまうこともよくありました。でも43歳になった今、人生折り返し地点に来て思ったのは、「我が儘にならなくちゃ勿体ない!」ということでした。自分が機転を利かせて楽しまないと!楽しめないことは続かないと思うんです。

私は「人のために何かをしたい」ということを悩むのではなく、それをしている自分に満足できるようになりました。まだまだ探している途中ではありますが、こうしてやってきた中で、使命だと思えるような仕事にもいくつか出会えました。優さんの今の状況も、きっと何か優さんに与えられた使命に気が付けるための試練なんじゃないでしょうか。そう考えると、もう、「やるしかない!」と思いますよ。

A3. 教育系事業会社 マーケティング部門リーダー T.Kさんの回答

上記お二方が、状況を打開するための具体策や経験に基づいた心構えについてきちんとアドバイスしてくださっているので、私は少し違った視点でお話ししたいと思います。

おそらく優さんは、こうすれば良いと言われている対策や心構えについて、既に分かっていらっしゃる。そして分かっていながらできないのではないかと推測します。思うに、おそらく優さんは、自分以外のプロジェクトメンバーの力量を信用していない。そのため自分が任された仕事の一部を担ってもらい、そのことで仕事のクオリティが下がり、自分の業務にミソを付けられるのが怖いのです。

沢渡さんもY.Aさんも書かれていますように、優さんは会社に期待されている優秀な社員なのだと思います。そして優さん自身も、二足の草鞋を履くことについて決して後ろ向きではなく、会社に期待されているからこその任命であるという矜持があるはずです。だからこそ、どちらのプロジェクトも中途半端で生産性の低い状況に陥っていることに危機感を持ち、こちらに相談されたのだと思います。

さて、この問題の根幹は、優さんがプレーヤーの視点で物事を運ぼうとする所にあります。あくまで実行部隊としての自分の力を用いてプロジェクトを成功させようとするから支障が出ているのです。ですからここで私が提案したいのは、優さんの意識改革です。

沢渡さんも触れていますが、今、優さんが会社に求められているのは「リーダーという階層から物事を判断する力」です。プレーヤーとして業務一つひとつのクオリティを高めることではなく、プロジェクトが滞りなく立ち上がり運営されていくようにするために、如何にメンバーの能力を判断し、適材適所を促し、力を発揮させるかを考えることなのです。

ご自身の立場がプレーヤーではなくリーダーなのだという意識を持てるようになれば、自ずと行動も変わってくるでしょう。業務内容を説明することを労力がかかると厭うこともなくなります。凡ミスの原因となる業務量の調整に必要なものが何かも見えてきます。また、優さんが持つ能力をメンバーにシェアする事も業務の一環なのだと思えるようになります。

つまりメンバーの力量を信用するしないの次元ではなく、力があるならば力を正しい方向に生かすことを考える、力が足りないならば力を高めるために鍛えるのが優さんの仕事であるという認識のもとに動けるようになるのです。これがリーダーという立場になる人間の行動特性ではないでしょうか。

『論語』に「子曰く、君子は器ならず」という格言があります。「リーダーは、一芸一能だけに役立つ人ではなく万能の人である」という意味です。この格言を荻生徂徠はさらに新釈し「君子なる者は民に長たるの徳あり。器を用うる所以の者なり」つまり「リーダーとは一芸一能のプレーヤーを使いこなす働きのある人間である」と論じています。

今、優さんが意識すべきは「君子は器ならず」です。これまではプレーヤーとして評価されてきましたが、今はリーダーの資質を期待されジャッジされていると思ってください。まだ実際はその役職にないからと遠慮せず、プロジェクト遂行のため最善の動きを促すためにどうすべきかを俯瞰した視点で考えていただきたいと思います。

この意識の切り替えさえできれば、優さんは既に答えが分かっていますから、万事うまくいくと思いますよ。頑張ってくださいね!

★戸田優さんからの返事

ご回答ありがとうございます。

T.Kさんの「優さんは既に答えが分かっています」という言葉にハッとしました。そして自分自身の気の持ちよう、「意識改革」が今の私に足りないものだったと胸にストンと落ちました。

沢渡さんは今の自分の状況を整理するために必要なポイントを示してくださったので、まずは「リソース」を明確にしていきます。

また、Y.Aさんの潔い回答も励みになりました。今日一日の仕事を振り返ってみても、まだまだ一喜一憂が多く悩みは尽きませんが、Y.Aさんの心構えで明日から仕事に向き合いたいと思います。

本当にありがとうございました!

お知らせ(ビジネス・ブレークスルー Q&Aサービス事務局より)いかがでしたか。

BBTでは戸田優さんのように、プロフェッショナルからのアドバイスを受けたい方からのお悩みを募集しています。お気軽に下記までご連絡ください。また、本記事に関するご感想などもぜひお寄せください。

お問い合わせ先:担当 高井 stakai@bbt757.com

この回答に登場した先輩、プロフェッショナルのご紹介

sawato
沢渡あまね(さわたり あまね)さん
あまねキャリア工房 代表
1975年生まれ。あまねキャリア工房 代表。業務改善・オフィスコミュニケーション改善士。
日産自動車、NTTデータ、大手製薬会社など16年間の経験を経て、2014年秋より現業。業務プロセス改善・インターナルコミュニケーション改善・働き方改革の講演・コンサルティング・執筆活動などを行っている。
NTTデータでは、ITサービスマネージャとして、ITオペレーションデスク・サービスデスクの立ち上げと運用管理・改善を手がける。
企業での新入社員・中堅社員・管理職の育成もおこなう(これまで指導した受講生は1,000名以上)。
著書に『職場の問題地図』(技術評論社)『新人ガール ITIL使って業務プロセス改善します!』『新米主任 ITIL使ってチーム改善します!』(C&R研究所)などがある。趣味はドライブと里山カフェめぐり。
http://amane-career.com/

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