選択の連続の中で ~譲れない価値観とは~【女性のキャリアを考える。第3回】
第3回目を迎える「女性のキャリア」にフォーカスした、Bond-BBT MBA2期生でキャリアカウンセラーもされている藤野祐美さんによる連載記事。今回は、「譲れない価値観」にフォーカスしたテーマでお届けします。正解がなく、変化も速い今の時代、その時々で最適な意思決定をすることが非常に困難になってきています。自分ではコントロールすることができないことも実に多くあるでしょう。そのような環境下で大切になってくるひとつの要素が、価値観です。それはなぜなのでしょうか?
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人生は選択の連続である
自身のキャリアを考えるにあたり、前回の連載ではまずはこれまでの自分自身を振り返っていただきました。自身の特性、強み、興味と共に見えてきた価値観。今回は、この中でも価値観をより掘り下げて取り上げます。
価値観とは、自分にとって譲れないもの、何よりも大切にしたいものであるとお伝えいたしました。価値観が明確であれば、多少の環境変化に遭遇しても、軸足が触れることはないともお伝えしました。
我々を巡る環境は常に変化し、何人もその変化を止めることはできません。
「女性活躍新法の施行により、新たな女性対象のプロジェクトが社内で立ち上がり、そのメンバーに選ばれた。」「経営トップが外国人に変わったため、社内の公用語が英語に変わった。」「研究所が日本国内からシンガポールに移転した。」等、その変化もより加速化し、予測不能なほど大胆になっています。
残念ながら我々は、これらの環境変化を意のままに動かすことができないばかりか、その影響を避けるわけにもいきません。例え自分にとって好ましくない変化であったとしても、その環境に居続けるためには、どこかで折り合いをつける必要があります。その拠り所となるのが、価値観です。なぜなら価値観は、自分にとっての「なぜ」を教えてくれるからです。
「なぜ、この仕事に取り組むのか。」「なぜ、あえてこのチャレンジを選び、困難に取り組むのか。」
それは、自分が何より大切にしたい家族のためかもしれない。自分自身の成長のためかもしれない。はたまた、収入のためや、仲間のためかもしれない。その解こそが自分にとって譲りたくないもの=価値観なのです。
価値観の明確化は、自らの判断基準の理解にも繋がります。
仕事においても、プライベートにおいても、我々の人生は、選択の連続と考えられます。“やるか、やらないか”、“右か、左か”。なんとなく、思いつきで選択をしたり、周囲に強制されて選択した際には、その結果が自分にとって好ましいものであったとしても、納得感が低くなってしまったり、簡単に結果を手放したりしがちです。
自分で選んだという主体性が欠けてしまいますので、ともすると、やり通すことも難しくなります。しかしながら、価値観という判断基準にそって動くことができれば、迷うことなく自分にとっての“正しい選択”を導き、コミットできることでしょう。
理想の仕事・理想の生活
価値観明確化のための一つの方法は、理想についてのイメージを膨らませることです。
なんの制約もしがらみもないとすれば、自分にとっての理想の仕事とは、どのようなものでしょうか。
挑戦できる仕事、安定している仕事、仲間と協力して成し遂げる仕事・・・抽象的な表現でも構いません。仕事において譲りたくないことはなんでしょうか。
一方、生活はいかがでしょう。理想の生活とは、どのようなものでしょうか。仕事中心の生活、家族中心の生活、趣味に没頭できる生活等々。
仕事も生活も、自分にとっての理想の姿を、どんどんイメージしてください。“理想”という言葉に、何が紐づいてくるでしょうか。それこそが、自分にとって譲れないもの=価値観なのです。
帝王学の一つでもあるエニアグラムでは、価値観は以下の9つの言葉に集約できるといわれています。あなたにとって、最も譲れないものは、どれですか?
・人の助け
・成功
・特別な存在
・知識
・安全
・強さ
・楽しさ
・調和と平和
WHATからHOWへ
キャリアを築いていく中で、外部環境との折り合いが必要である限り、時には意にそぐわない仕事を担当しなければならないこともあります。つまり、我々は“何をするのか”=WHATは選べないことがありますが、それに“どう取り組むのか”=HOWについては、いつでも自由に選択することができます。
会社の方針により、とても高い営業目標を課せられた。高い目標達成というWHATは、避けられませんが、これにどう取り組むのかというHOWは、自分次第です。
成功することが自分にとっての最も大切な価値観であるという方なら、いかに成功するのかを主眼に取り組めばよいわけですし、例えその道程が厳しいものであったとしても、それは、“高い目標を達成しなければいけない”からではなく、“成功するために取り組んでいる”と考えることができれば、関わりも自ずと変わってくることでしょう。
“楽しさ”が大切な価値観であるという方ならば、高い目標達成の中でいかに楽しさを見出すかからアプローチすることができるでしょう。
価値観が不明確であると、つい“何をするか”にばかり目がいってしまい、“なぜ”という本質に気づくことができません。“なぜ”が理解できれば、“どう取り組むのか”に落とし込むことができます。“なぜ”が理解できない中での取り組みは、自ずとやらされ感の強いものとなってしまうことでしょう。
キャリアを磨きあげることは、誰に強制されるものでもなく、自らが取り組むべきこと。価値観を明確に理解することは、自らの軸足となり、判断基準となりうるのです。
講師プロフィール
藤野 祐美 氏
株式会社Y’sオーダー 代表取締役
オーストラリア BOND大学 大学院 経営学修士課程(MBA) 修了。
ミノルタカメラ(現コニカミノルタ社)にて、産業用計測機器の販売企画、販売支援に従事の後、P&G社(米資本)での国際人事業務を経て、世界最大の水産飼料会社ニュートレコ社(オランダ資本)の日本法人立ち上げに参画。同社はじめ、関連会社2社を起ち上げ、取締役に就任。アジア太平洋地域人事統括として、組織開発、人材開発に従事。その後、2007年株式会社Y’sオーダーを設立、代表取締役就任。グローバル市場で活躍できる人材育成のための組織開発・人材開発を手掛ける。
皆さんが大切にされている価値観は何ですか?(Bond-BBT MBA事務局より)今回の連載記事はいかがでしたでしょうか?
今回の記事では、皆様にご自身の価値観を考えていただくための内容でした。正解がなく変化も速い今の時代、「右に行くのか?それとも、左に行くのか?」「今、何をやって、何をやらないのか?」「なぜ、その道を選ぶのか?」など、簡単にその時々の解を導き出すことが難しい状況が続いています。そのような中で難しい意思決定をするためにも、ご自身の大切にしていることを軸にいかに判断を下していくのかが重要になってきていると言えるでしょう。
皆さんが大切にされている価値観は何でしょうか?ぜひこの機に一度、棚卸をしていただくとよろしいのではないかと思います。
そして価値観を軸に最適解を導き出せる可能性を高めるためにも、情報を的確に抜け漏れなく整理して意思決定をする助けとなるフレームワークや理論などを学ぶ意味もあるのではないでしょうか。MBAプログラムで学ぶことは、間違いなくその一助になるかと思います。ご検討中の方はぜひチャレンジください!皆様の挑戦を心からお待ちしております。
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