【第2部】軸がぶれない人になるためには?(修了生/熊野里枝子さん)
何事にも時間を忘れて没頭する熊野さん。現職のプロジェクトマネージャーになられてから経営知識の必要性を痛感しBond-BBT MBAに入学されたようですが、学んでいく課程でMBAとは「テクニカルな経営知識を学ぶ場」以上に「人生哲学を磨く場」として大きな価値があることに気が付いたとおっしゃられています。
それはどういったことなのでしょうか?今回は3つ紹介された大きな学びのうちの1つ目について紹介します。
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【第1部】なぜ、ピアニストからグローバル製薬会社のプロジェクトマネージャーに転身したのか?
Bond-BBT MBAでの学びを通してパワーアップした世界観
2人の子育て、仕事、Bond-BBT MBAの三足のワラジを履いていた日々は想像以上に大変なものでしたが、結果的に一生涯自分の人生を豊かにしてくれるものとなったと実感しています。もちろん会計、ビジネス統計、財務といった「テクニカルな側面での経営知識」も学ぶことができて良かったのですが、何といっても志高き仲間達と「人生哲学:人、経営者としての精神」を磨けたことに断然価値があることを実感しています。今日はその中から3つ自分の世界観がパワーアップした学びについてご紹介します。皆様はこの3つの問いにどう回答されるでしょうか?
2)人は何のために生きているのか?
3)どうすればテロ、戦争や貧困がなくなるのか、自分にできることは?
恥ずかしながら私は、それまでこういった人生に必要な哲学を突き詰めて考えてこれていない人間でした。出遅れ感は否めませんが、MBAプログラムの中でこの3つの問いについてしっかり自分なりの考えをまとめあげる機会をいただけたことは、何よりの収穫でした。
「自我の確立」
「軸がぶれない人になるためには?」への私なりの回答を述べる前にまずは「自我の確立」について。これは「戦略的人材マネジメント」の講座で出てきたセオリーで、自分の人生の謎を解き明かしてくれたという感動がありました。先ほど(第1部掲載)青年海外協力隊からキャリアスタートしたことをお話ししましたが、この活動には自分では気が付いていない大きな意味があったことを教えてくれました。
なぜ青年海外協力隊に参加したのか?
私は3歳でピアノを習い始め中学1年生までは先生や親を喜ばせることしか考えない、勉強もよくでき、正義感の塊でクラスを引っ張っていくような本当にいい子でした。ところが中学2年頃から大学卒業までは、その真逆、先生や親を困らせることを一通りする悪い子の典型のような思春期を過ごしました。
環境と要領のおかげでなんとか大学は卒業し、企業からの内定もいくつか頂いていましたが、「このまま就職してはいけない、本当にやりたい仕事は何なのか、その前に本当の自分は何者なのか。」といった漠然とした不安があり、一度自分が正しいと思うことを納得するまで挑戦してから就職をしたいと考え、青年海外協力隊に参加することになりました。一見ハチャメチャに思えるこの自分の思春期時代ですが、実は「自我の確立」のセオリー通りということに気が付いたのです。
戦略的人材マネジメント(当時)では、12~18歳はモラトリアム期と呼ばれ、そのときに自分の軸を振りながら、自分の立ち位置はどこか、自分は何者なのか、他人は何者なのか、自分と他人を分けて、自分の軸をしっかり認識する期間ということでした。中学、高校は反抗期とも呼ばれますが、この時にしっかり親や先生の言うことに疑問を持ち、軸を振ることが自我の確立には欠かせないとのこと。
なるほど、と思いました。私のモラトリアム期も12歳からで、それまでの「先生や親を喜ばせるいい子」人生に疑問を持ち、「先生や親を困らせてみる子」側に軸を振りながら自分の立ち位置の確認をしていたのです。本当ならここでしっくりくる場所があるはずでしたが、その場所にはぴたりと来る場所がみつからず、青年海外協力隊に参加し、また軸を振り戻したところで「やっぱりここだ」とぴたりと合った気がします。自我の確立が完了したのです。
人生随分無駄にしてしまったと反省していた私のモラトリアム期でしたが、実は大変な意味があったことが分かったことは大きな収穫でした。現在7歳、4歳のわが子達に反抗期が訪れても「これは必要不可欠な自分軸探しの時期」と寛容に見守れる気がします。世界的には18歳では一回完了しているべきモラトリアム期のようですが、集団教育を重んじてきた日本は自我の確立が遅い、もしくはビジネスマンになってもモラトリアム期の人が比較的多いとのことでした。私も協力隊を終えて帰国したのが25歳、随分かかってしまった方の人間です(笑)。
「軸がぶれない人になるためには?」
では次に、軸がぶれない人とはどういうことなのか。モラトリアム期を通して軸を定めたとして、さて、軸はどこなのか、あなたの軸とは何ですか?
軸とは自分の信念と考えるといいということでした。では、自分の信念を言葉で説明できる人はどの程度いるのでしょうか。答えられないと感じる日本人は多いかもしれません。これは教育環境と密接に関わりがあるとのことでした。
アメリカ人は「be yourself」と小さいころから言われ続けて、信念を磨き続けていく。人に合わせることはないわけです。中国や韓国は「Win the race.」と教えられる。そして、日本人は「Hold your own」、我慢しなさい、迷惑をかけるのはよくない、みんなと同じようにしなさい、と言われて育てられる傾向が強い。だから、比較的信念が定まらない、ぶれやすいというのです。ここをしっかり意識して自分の信念を磨き続けることが日本人には重要です。もしかしたら海外のビジネススクールでは「信念?当然幼いうちから家庭教育で磨かれていることでしょう。」と紹介されなかったかもしれませんので、こういうところはBond-BBT MBAで「日本人向けの科目」がある大変良いところだったと考えます。
では、こうした典型的日本人の信念はどうやったら強くなり磨き続けることができるのか、Yagui(2012)“Have your own axis.(RMS message vol 28)”に書かれていることを紹介します(易訳後述)。
-Listening all the important events and decisions in the past.
-Describing how you want to be recognized from others,
-what your strengths are,
-what you want to overcome.
2)Make your own story of your belief from the result of 1).
3)Live on the story.
4)Master your belief.
つまり、これまでの大事なイベントや大きな決断をしたときに大切にしていたことは何か、他人からどう思われたいか、自分の強みや克服したいことを振り返りつつ自分のストーリーとして明文化し、腹落ちするまで持ち歩き自分の信念をマスターせよとのことです。軸がぶれやすいと感じる人、何か決断に迷いがある時はこれを見返すことが重要といっています。私も良い機会でしたので、自分の信念を作り課題の小論文に入れました。まだ仕事の手帳に挟んで持ち歩いていて、ここぞという時には見返しています(笑)。
当日は小論文に書いた「熊野さんの信念」が映写されました。家族(旦那さまやお子様)、仕事、友人、地球環境や平和についての熊野さんの考えが書かれているもので人生の指針となるようなものでした。これを機に自分の信念についても作ってみるのもいいかもしれませんね。
次回は、残りの2つの質問について熊野さんのお話をご紹介できればと思います。
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【第3部】ポジティブ心理学から学んだ「幸福」であるということ。
【第4部】グローバルで力を発揮するために磨き上げるべき能力とは?
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【第1部】なぜ、ピアニストからグローバル製薬会社のプロジェクトマネージャーに転身したのか?