急成長ステージ絶えず付加価値を!わきを固め、競合に追従を許さない!!
Airbnbですら付加価値を追及し続けている
会社を設立し、ビジネスモデルが世の中に受け入れられ、ようやく急成長ステージに入った段階で、最も重要なことのひとつは、他社に追い抜かれないように、絶えず付加価値をつけていくことだと思います。
このステージでも安心してはいけません。楽天のようなビジネスモデルも、最初の急成長ステージでは、様々なライバル企業が出現しました。誰でもがこのビジネスモデルはまねができると思ったのです。
しかしながら、楽天は誰にも追い抜かれないような付加価値とスピードで競合がとうとう追随してきませんでした。皆様ご存知の米国のAirbnbですら付加価値を追及し続けています。創業時と今とでは、随分ビジネスモデルが変わっているはずです。例えば、Airbnbの利用料金は、従来は場所を提供する方が値段を決めていましたが、現在は、最適な金額をAirbnbから提示されます。Uberもまだ急成長ステージですが、競合は世界中に出てきています。でも追従はされていないですね。
急成長をしている企業は、必ず目をつけられます。そこを全速力で逃げ切るということでしょうか。
付加価値は何かを顧客とともに考える
それでは、付加価値をどのようにつけていったらいいでしょうか。それは顧客に聞くことです。何が足りないのか、何を削ったらいいのか。LINEもどんどん機能が追加されてきていますね。例えば、LINEの「既読」の表示は、震災時に、送信相手が無事でいるかどうかという安否確認として非常に役に立つという声があり付加した機能です。
もし皆様の企業が急成長しているのであれば、付加価値は何かを顧客とともに考えていくことがベストであろうと思います。でもはっきり言って、なかなか顧客は本音を言いません。企業側から聞かれた場合は特に正直に返答しません。ましてやその企業が急成長している場合は、そのビジネスモデルに賛同する声ばかりです。それでも顧客の声を聴き続けることです。
メルカリは業界では後発企業でありながら、個人の利用者の役に立つようなネット販売のビジネスモデルに付加価値があり、あっという間に急成長ステージです。社長のお話を聞くと、創業時から顧客の利便性を最大限生かしてきているビジネスモデルだから急成長しているのだと合点がいきました。
私自身も数か月前にある事業でグループ会社を設立しました。非常にニッチなサービスで、マイナー出資で社長も他の人に任せたのですが、この会社は、開業時からワールドビジネスサテライトの取材がきました。世の中には、ここに付加価値を持つ人も多いのか、と私自身もびっくりして、「付加価値を絶えず加えていき、わきを固め、競合に追従を許さない!」と気を引き締めているところでもあります。
顧客にとって真の付加価値は何か
しかし、「付加価値」を誤解してはいけません。どのようにして価値を出していくのか。無駄な付加価値は、コストがアップするだけです。高音速で飛んできたコンコルドは、速いことが付加価値でした。しかし速いだけでは最終的には顧客に受け入れられませんでした。環境も乗り心地もと、いろいろと考えないといけないのでしょう。
ネットで生命保険に入れるビジネスモデルで、営業を展開している生命保険会社が何社かあります。残念ながら当初予定通りの伸びではありません。生命保険はやはり説明をしてもらうことが顧客には付加価値なのでしょうか。同じ金融商品でも株式や投資信託とは販売方法が異なるようです。
また、コスト削減コンサルティングも一時はIPOを目指して数社が急成長ステージに入っていました。しかしながら、今では、コスト削減が顧客の最重要な付加価値ではなくなっているのかもしれません。
転職祝い金を出す会社も急成長ステージに入りIPOを果たしましたが、今後は、急成長ステージから業容拡大の時期を迎え、新たな顧客への価値を模索しているように見えます。
薬品業界もジェネリック医薬品が安いということで目をつけていますが、患者への信頼度が今一つないのか、価格だけでの価値訴求力では、魅力あるものではないようです。
まねられても圧倒的なスピードで付加価値を追求していく
急成長している企業には、必ず模倣する企業が現れます。それが競争社会です。例えば、急成長している会計ソフトの会社は、特許の模倣でライバル企業に訴訟を起こしました。やはり急成長企業には模倣を疑われても仕方がない追従企業がいつもいるのかもしれない、と再認識しました。
また、毎年のように人気の外食企業が出現し急成長していますが、その後、新規性を失い、更なる付加価値をと頑張っても、すぐには生まれず、なかなか急成長ステージは維持できないのが事実です。
まねられても圧倒的スピードで駆け抜け、負けない付加価値をつけていくことが必要だと思っています。
講師プロフィール
福田 徹 氏
株式会社福田総合研究所 代表取締役社長
1984年3月早稲田大学卒業、豪州Bond大学大学院MBA取得。野村證券、ソニー生命(MDRT)を経て、2005年福田総合研究所設立。その間、証券英国現地法人にて、サッチャー政権の英国ビッグバン対応業務を行う。國學院大學で、財務分析、証券分析、関東学院大学でFP、武蔵大学で金融数学を講義、経済学部金融学科でファイナンス、ケーススタディーのゼミを担当。豪州のマードック大学ではマーケティングの客員講師。上場会社の社外取締役と社外監査役を兼務。中小企業から1部上場企業まで、各社のテーマに応じてコンサルティングを行っている。大手証券、地銀、地銀協、生保など多くの企業で研修も実施。
主な著書:「なぜ、会社の資金繰りが悪くなったのか?」(税務経理協会)、CFO協会のIRテキストブック監修、「上場企業、上場準備企業のIR担当者向けテキスト」(電子書籍)、『「株式上場」が頭をよぎった経営者が読むIPO入門』(Amazon Kindle)。論文「証券アナリストとIRオフィサーの関係性について」。